ことばの表出(話す)を促すには‥‥

ことばの表出(話す)を促すには‥‥

前回のお悩みコーナーにも上がっていましたが、「育ち」に通ってくるお子さまの中には、初回相談で「言葉に悩んでいます」「言葉が出ません」「発音が気になります」などたくさんのお悩みがあり、「育ち」で練習をしています。
勉強や運動などそれぞれに得意不得意があるように、「言葉」にもお話するスピードや成長力はさまざまです。
ことばの表出(=話す)に繋げるには、色々な準備段階を整えることが必要です。
では、みなさんが「言葉」を気にされるのは何歳くらいからでしょうか‥‥?
一般的には、1歳くらいから「ママ」「パパ」「ワンワン」などの有意味語が出てくると言われています。
そして「あれ言葉がゆっくりかも」「出ないかも」と目に見えて分かり始めてくるのがだいたい1歳くらいからだと言われています。
保護者の方から、面談でよく「結構話かけているつもりですけど」「絵本もたくさん読ませています」とお聞きします。

ことばの表出準備段階に必要なものとは

では、ことばの表出準備段階にはどんなことが必要でしょうか‥‥。
「聞く力」「理解する力」「コミュニケーション意欲」「口や舌の筋肉」そして前回のお悩みコーナーにもありましたが、「人への興味・関心」も1つの理由となります。
今回はさまざまな理由がある中で「口や舌の筋肉」についてお話します。

生まれてから、まず赤ちゃんは母乳やミルクにて栄養を摂ります。
赤ちゃんは、ミルクや母乳を一生懸命吸っていますが、その時にもうすでに、話すのに必要な器官「口や舌」を使っているのです!
そして、5~6か月頃からは離乳食が始まり、段々と柔らかいもの食べ物から固い食べ物へと移行して、舌や口、口蓋、顎などを使って食事を摂ります!
つまりお話をするのに必要な「舌や口の筋肉」は、「食事」にも重要な関わりがあります。
なので、「話かけているのに…」「絵本を読み聞かせているのに…」と悩まれているお母様たち。
…もうすでに0歳児から、ことばの表出(=話す)への促しを、お母様をはじめご家族の方々が一生懸命支援されているのです!

言語聴覚士は、「ことば」の練習に目を向けがちですが、摂食嚥下という「食べる」練習にも取り組んでいます。

「食べる機能とは」

食べる機能は①「先行期」②「口腔準備期」③「口腔送り込み期」④「咽頭期」⑤「食道期」の5段階に分かれています。
①に関しては、目で食事を見て「今日はこの食べ物だ!」と認識することや「これくらいの大きさのサイズで食べようかな」と口を開ける量を決めて、この時に口唇を主に使って食べます。
②「口腔準備期」では、取り込んだ食物を咀嚼して飲み込みやすい食塊を形成します。
これには歯や舌、口蓋などを使います。
③「口腔送り込み期」は、舌により食塊を咽頭(喉)へ送り込みます。
食べる機能5段階の中で、特に言葉を表出するのに関係する機能が①~③になります。

初回の面談の際に、言葉以外にも嗜好品や離乳食の様子もお聞きしているのは、お話をするために必要な器官(口や舌、顎)材料だからです。

「ことばの練習」

ことばの練習では、絵カードや絵本、玩具を使用して練習していますが、実際にお菓子を用いて表出に必要な練習もしています。
どんなお菓子を使って舌や口を鍛えているかというと…
グミや棒付きの飴、ガム、ポッキー、スナック菓子を使って言葉を促す練習をしています。
お菓子の種類における目的はそれぞれ違います。
例えば、

  1. 舌の緊張が強かったり、口唇と舌の協調を促したい練習をしたいときには、ガムやグミなどを使用して緊張のない平らな舌を作る練習をします。
  2. 前舌の練習をしたいときには、せんべいなどを使用して唇に付けて舌で取ってもらう練習をします。
  3. 舌に力を入れる練習では、ポッキーなどを使用して口蓋に舌で押しつぶす練習をします。
  4. 舌をスムーズに動かす練習では、棒付きの飴を使用して練習をします。

実際にこれらのお菓子を用いて舌や口を使う直接練習を私たち「育ち」の言語聴覚士も実施しています。
子どもたちはお菓子を使用すると目的の意図を充分に理解できていなくても更にやる気を出して、ことばの練習に取り組んでくれています!
食べる力がしっかりと育っていくと、舌や唇、顎などを使って色々な音を発することにもつながります。
当然お菓子だけではなく、日頃から保護者の皆様が作っている3食の食事もとても意味のあることです。
お菓子など身近なものであれば、ご家庭でも楽しみながらことばの練習できますね。
もしお菓子を使っての練習で気になることや食事のことで相談したいことがあればお気軽に各事業所の言語聴覚士にご相談ください。

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